賃貸仲介業界の現状と給料の実態
不動産業界と聞くと、年収1000万円以上稼ぐトップセールスや億プレーヤーの存在から、高収入のイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし実際のところ、賃貸仲介業界の平均年収は決して高くありません。インディードの調査によると、賃貸営業の平均年収は約390万円前後が目安となっています。これは日本の全業種平均年収457万円と比較しても低い水準です。
なぜ賃貸仲介の給料は低いのでしょうか?その理由と年収アップの方法について、賃貸業界20年のベテランとして解説していきます。
賃貸仲介の給料が低い5つの理由
賃貸仲介営業の給料が低い理由は複数あります。業界の構造的な問題から個人の営業スタイルまで、様々な要因が絡み合っています。
まずは、なぜ賃貸仲介の給料が低くなりがちなのか、その主な理由を5つご紹介します。これらを理解することが、年収アップへの第一歩となるでしょう。
1. 企業によって歩合率に大きな差がある
賃貸仲介業界では、会社によって歩合率(インセンティブ率)が大きく異なります。高いところでは売上の40〜50%が歩合として支給される会社もあれば、わずか10%程度しか還元されない会社も少なくありません。
特に大手不動産会社では、ブランド力や集客力を理由に歩合率が低く設定されていることが多いのです。
私が新人時代に勤めていた会社では、基本給が月8万円程度で、売上げが上がらなければインセンティブもつかないため、ほとんど稼ぐことができませんでした。年収は280万円程度だったのです。
2. 一定数の契約をこなさないと歩合が稼げない
賃貸仲介の給与は、契約が成立するごとに手数料から歩合が発生する仕組みです。しかし、物件の単価が低い賃貸営業で高収入を目指すには、膨大な数の契約をこなさなければなりません。
家賃10万円の物件であれば仲介手数料は5〜10万円程度。これが営業マンの売上となりますが、ここから会社の取り分を差し引くと、1件あたりの営業マンの収入はさらに少なくなります。
月に10件以上の成約を安定して取れる営業マンはごくわずか。多くの営業マンは月に数件程度の成約で、歩合収入も限られてしまうのです。
3. 反響営業が中心で積極的な開拓機会が少ない
賃貸仲介業界では、ポータルサイトからの問い合わせ(反響)に対応する「反響営業」が中心となっています。自ら積極的に顧客を開拓するスタイルではないため、営業力を十分に発揮できる機会が限られているのです。
反響営業は比較的取り組みやすい一方で、他社との競合も激しく、成約率も低くなりがちです。結果として、安定した高収入を得ることが難しくなっています。
4. 2:6:2の法則で説明できる収入格差
不動産営業マンの年収は「2:6:2の法則」で説明できます。これは、
- 生産性が高く・会社への貢献度が高い人材が2割
- プラスでもマイナスでもない人材が6割
- 生産性が低く、会社にとってマイナスの人材が2割
という分布を示しています。上位2割の営業マンは年収1000万円以上稼ぐこともありますが、残りの8割はそれほど稼げていないのが現実です。
求人情報に書かれているのは、この上位2割の営業マンの実績だけを記載しているケースがほとんど。注目されるのはいつも上位2割の年収なのです。
5. 年による売上変動が大きい
不動産業界は数字をあげてナンボの世界です。そのため、その年によって年収にかなりばらつきが出るのも特徴といえます。
ある不動産仲介営業マンの例では、「今年の年収は300万円程度です。不動産は営業力もさることながら、かなり案件に依存しますので運も大切な要素だと思います。ちなみに昨年の年収は650万円程度です」と語っています。
このように、年によって収入が半分以下になることも珍しくないのです。
賃貸仲介で年収をアップさせる5つの方法
賃貸仲介業界で年収を上げるためには、単に「頑張る」だけでは不十分です。戦略的なアプローチが必要になります。
私自身、20年の経験の中で試行錯誤を重ね、年収を大きく伸ばすことができました。その経験をもとに、実践的な年収アップの方法をご紹介します。
1. 高インセンティブ率の会社を選ぶ
賃貸仲介で年収アップを目指すなら、まず高インセンティブ率の会社を選ぶことが重要です。歩合率が40〜50%と高い会社であれば、同じ成約数でも年収は大きく変わってきます。
特に中小の不動産会社では、大手に比べて歩合率が高く設定されていることが多いです。もちろん、集客力や教育体制などのバランスも考慮する必要がありますが、年収アップを最優先するなら歩合率は重要な判断基準となります。
あなたは今、どれくらいの歩合率で働いていますか?もし20%以下なら、もっと条件の良い会社を探してみる価値があるかもしれません。
2. 宅地建物取引士の資格を取得する
宅地建物取引士(宅建)の資格を取得することで、基本給のアップや役職への昇進が期待できます。また、お客様からの信頼度も高まり、成約率の向上にもつながります。
不動産関連の資格は他にも不動産鑑定士などがありますが、まずは宅建から取得するのがおすすめです。資格取得のための勉強は大変ですが、キャリアアップのための投資と考えれば決して無駄にはなりません。
宅建資格があれば、転職時にも有利になりますし、独立の際にも必須の資格となります。長期的なキャリア形成を考えるなら、早めの取得を目指しましょう。
3. 高単価物件や事業用賃貸に特化する
賃貸仲介でも、扱う物件によって収入は大きく変わります。一般的なアパートやマンションよりも、高級賃貸や事業用物件(オフィス、店舗など)を扱うことで、1件あたりの仲介手数料を大幅に増やすことができます。
例えば、家賃10万円の一般的な物件の仲介手数料が10万円だとすると、家賃100万円のハイグレードマンションや事業用物件なら、仲介手数料は100万円になります。成約数は少なくても、単価が高ければ年収は大きく変わるのです。
高単価物件を扱うには専門知識や経験が必要ですが、それだけの価値は十分にあります。少しずつ高単価物件の知識を身につけ、取り扱いの幅を広げていきましょう。
4. 営業力を磨き成約率を高める
どんなに良い条件の会社に勤めていても、成約に結びつけられなければ意味がありません。営業力を磨き、成約率を高めることが年収アップの基本です。
特に重要なのは、お客様のニーズを正確に把握する力と、適切な物件を提案する力です。「とりあえず物件を見せる」のではなく、お客様の本当の希望を引き出し、最適な提案ができる営業マンが高い成約率を誇ります。
また、物件知識や地域情報にも精通していることで、お客様からの信頼を得やすくなります。日々の勉強と経験の積み重ねが、営業力の向上につながるのです。
5. 独立して高い歩合率を実現する
経験を積んだ後の選択肢として、独立という道もあります。独立すれば歩合率は100%となり、すべての売上があなたのものになります。
もちろん、独立には事務所費用や広告費など様々なコストがかかりますが、それを差し引いても会社員時代より高い収入を得られる可能性は十分にあります。
私の経験では、独立した場合、週5日の勤務で月収60万円を目指すことは十分に現実的です。副業として始める場合でも、週2日の勤務で月20万円程度の収入は見込めるでしょう。
独立の際には、これまでに築いた人脈や信頼関係が大きな財産となります。日頃からお客様との関係構築を大切にしておくことが、将来の独立成功につながるのです。
賃貸仲介業界で成功している人の特徴
賃貸仲介業界で高収入を得ている人には、いくつかの共通点があります。これらの特徴を理解し、自分のものにすることで、あなたも成功への道を歩むことができるでしょう。
では、実際に業界で成功している人はどのような特徴を持っているのでしょうか。
1. 地道な業務の積み重ねを大切にしている
不動産賃貸は華やかな印象があるかもしれませんが、実際は地道な業務の積み重ねによって成功している営業マンがほとんどです。
物件のリストアップや顧客対応、アフターフォロー、広告作成、内見時の説明内容などを丁寧に準備することが成功の分かれ道となります。
成功している営業マンは、こうした地味な作業も怠らず、コツコツと積み上げていく忍耐力を持っています。
2. お客様視点で考え、信頼関係を構築できる
高収入を得ている営業マンに共通するのは、「自分が稼ぐこと」よりも「お客様の満足」を優先する姿勢です。
お客様にとって最適な物件を提案し、長期的な信頼関係を構築することで、紹介や再利用につながり、結果として高い収入を得ることができます。
あなたは今、お客様のことを第一に考えていますか?それとも、自分の歩合のことばかり考えていませんか?
3. 継続的な学習と自己投資を行っている
不動産市場は常に変化しています。法律の改正や市場動向、新しい物件情報など、常に最新の知識をアップデートし続けることが重要です。
成功している営業マンは、セミナーへの参加や資格取得、書籍での学習など、自己投資を惜しみません。こうした姿勢が、お客様からの信頼獲得につながり、高収入へと結びついているのです。
学びを止めた瞬間から、あなたの価値は下がり始めます。常に向上心を持ち、新しい知識を吸収し続けましょう。
まとめ:賃貸仲介で年収アップを実現するために
賃貸仲介の給料が低い理由として、歩合率の差、契約数の壁、反響営業中心の業務形態、収入格差、年による変動などがあることがわかりました。
しかし、適切な戦略と努力によって、賃貸仲介でも十分に高い年収を得ることは可能です。高インセンティブ率の会社を選ぶ、宅建資格を取得する、高単価物件に特化する、営業力を磨く、そして将来的には独立を視野に入れるといった方法で、年収アップを目指しましょう。
また、成功している営業マンの特徴として、地道な業務の積み重ね、お客様視点での対応、継続的な学習と自己投資が挙げられます。これらを意識して日々の業務に取り組むことで、あなたも賃貸仲介業界でのキャリアアップを実現できるでしょう。
不動産賃貸の仕事は、単に物件を紹介するだけでなく、お客様の人生の重要な決断をサポートする、やりがいのある仕事です。その価値を理解し、プロフェッショナルとして成長し続けることで、収入面でも満足のいく結果を得ることができるはずです。
あなたも今日から、年収アップに向けた一歩を踏み出してみませんか?
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